空調装置

……もう朝か?

いや、 そんなことないことはわかっている。 ここ数年朝まで一度も目覚めずぐっすりと眠れたことなんて数度しかない。 その数度でさえ前日に徹夜をしたという睡眠不足がわかりきっている時だけだ。 ここ数日は徹夜などせず、 コーヒーも飲まない健康的な生活が続いている。 起きた原因なんてわかりきっている。

中途半端に開いたカーテンの隙間から見える景色はまだ暗い。 まだ起きる時間ではないのはわかった。

今、 何時だ?

あいにくベッドから起きずに確認できる時計はこの部屋に無い。 ここ数年であらゆることが携帯端末でできるようになったため目覚まし時計なんてものは既に過去のものになっているのだ。

時刻を確認するためベッドサイドランプのスイッチを入れた。

睡眠中に明るい光を見ると眠気がなくなるっていうよな。 ベッドサイドに置く時計と買おうか。

毎夜起きた時に頭の中で起きるルーチンワークとともに部屋の中にある壁掛時計で時刻を確認する。

まだこんな時間か。 まだまだ寝れる。

再び眠りにつこうとタオルケットを掛け直しランプのスイッチを切る。 起きた原因を解決していないのに。 そしてその原因を解決せずには再び眠れないことはわかりきっているのに。

これくらいなら大丈夫だろ。 朝まで頑張ってくれ。

そう思いながら布団に入り5分が過ぎた。

眠れない……。 行かなきゃダメか。

行くためのコストなんて微々たるものだ。 そんなことはわかりきっている。 それでも抗いたくなるものがここにはある。 太陽から離れた時期には体温の温もり、 この時期であったらで快適に調整された空間だ。

光を浴びたり身体を動かすと眠気が覚めるっていうのに、 なんで眠気を覚ます行動をしないとまた眠れないんだろうな。

何度となく思い浮かべた思考を脳の片隅に追いやりながらベッドを出て外界へと続く扉を開けた。

その瞬間部屋の中からでは想像もできなかった密度の空気が私を包み込んだ。 大きく息を吸い込んでも空気の密度が低いせいか十分な酸素が届かない気がする。

距離にして数mだが調整された空間に慣れた身には耐え難い距離だ。 しかも目的地は密閉された空間ときている。

熱帯夜の午前2時、 そんなことを思いながら私はトイレへと向かった。